ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通関業者の比較

先日色々と調べ物をしていた時に面白い資料を見つけました。

 

公正取引委員会が荷主にアンケートを出して集計したものです。

平成21年と少々古いものでしたが興味深いものでした。

 

その中の情報で目を引いたのは、

① 荷主が利用している通関業者の数

②通関業者の兼業業者も含めた総売上高の分布

③上記の総売上高に占める通関業収入の割合

 

この内容について個人的な感想を述べていきたいと思います。

 

①荷主が利用している通関業者の数

資料には次のような事が記載されていました。

1社:13.6%

2社:18.0%

3社:17.0%

4社:11.3%

5社以上:39%

約85%の荷主が複数の通関業者を使っている。

 

という事です。

 

なかなか興味深い内容です。10年以上前の資料とはいえ、現在と比較しても大幅に数値が変わる事は無いのではないかと思います。少なくても上記の「85%」という数値は現在においても「50%」にはならないだろうと思っています。

 

すなわち、大半の荷主が現在も複数の通関業者を使っているという事なのだと思います。

 

これは何を示しているかと言うと……常に自分が所属している通関業者(=自分=通関士)は荷主から他社と比較されているという事です。

 

荷主が複数の通関業者を使っている理由は様々だと思います。

案件ごと = 商品によって使い分けたり仕出国や各港によって通関業者を使い分けたりが考えられます。

 

また、リスクヘッジの為というものもあると思います。

通関というのは物流の中で重要なポイントで、通関ができなければ商品がそこで止まってしまい市場に出す事が出来なくなる。委託していた通関業者が何らかの理由で業務が滞ったりしたらそこで物流はストップしてしまう。また委託先(=サービスの仕入先)という点においても1社に委託するのは相場観がわからなくなる、という理由もあるのではないかと思います。

 

先に「比較されている」と言いましたが、広い意味で比較の為に複数業者に委託している荷主もあれば、そのような意図は無いが上記の理由で結果的に複数を使っていれば何かの折に不可避的に比較する機会が出てきてしまう事もあると思います。

 

最前線で担当として業務をしている営業窓口や通関士も同じ事が言えます。

自社担当と客先担当が頻繁にやりとりをして親密な関係を築いていたとしても、上記の統計からすると他の通関業者も使っておりそこの担当ともやり取りをしている(または会社として)。

 

法律の上での仕事なのでなかなか差別化は工夫が必要ですが、通関知識や税関対応、書類のチェックなどの手際の良さなど知らず知らずのうちに競合通関業者(通関士)と見比べられているかもしれません。

 

ルーチンに没頭していると忘れがちになるのですが、我々通関業者も業(ビジネス)を営んでいるので市場から選ばれる立場にある事を忘れてはいけません。それを思い出させる資料だと思いました。

 

 

②通関業者の兼業業者も含めた総売上高の分布

 

この話をする前に、兼業している通関業者はどんな業を営んでいるかと言うデータがありました。

倉庫業:55.1%

道路運送事業:53.9%

港湾運送事業:48.2%

海上運送事業:30.2%

航空/船舶代理店業:13.8%

そして、通関業者全体で兼業している業者が99.3%、0.7%が通関業のみを営んでいるという事です。

 

大手物流業者になると上記の事業は2つ以上は営んでいるので詳細な実態を把握するのは難しいのですが、まずは殆どの業者が兼業しているという事ですね。

 

次にその兼業している通関業者の総売上高の分布です。

1億円未満:3.5%

1〜10億円未満:24.9%

10〜50億円未満:36.9%

50〜500億円未満:28.0%

500億円以上:6.6%

中小、中堅、大手企業をどこのラインで区分けするのか少し難しいのですが、仮に総売上高50億円までを中小企業としたら通関業者の約65%がそれに該当するという事になります。

 

これを多いと感じるか少ないと感じるか……。

 

当たり前ですが、その企業の社員数は売上高にある程度比例します(もちろん同じ業界の中で比べての話です)。様々な要素を加味すると断定的な事は言えなくなりますが、人材豊富な環境で働いている現場の方はそれ程多くは無いということ。同時に能力と意志さえあれば今いる環境も変える事もできるし評価もされやすい所がそれなりにあるということ。前向きに考えれば、腕に覚えがあれば活躍できる職場が沢山あるということなのだと思います。

 

③上記の総売上高に占める通関業収入の割合

 

最後にこの項目なのですが、下記のような数値が記載されていました。

総売上高

1億未満の事業者:31.5%

1億以上10億未満:6.8%

10億以上50億未満:2.6%

50億以上500億未満:1.2%

500億以上1兆未満:0.7%

それ以上:0.5%

 

売上規模が大きくなるほど比率が下がっていくのは当然だと思います。

 

注意しなければいけない事があり、ここで言う通関業収入というのは業法で定められた料金表によるものだけなのではないかと思っています(想像です)。

 

通関業を営んでいる営業所(部署)の収益 = 料金表によって収受される金額とは必ずとも一致しない。

 

もちろん企業によって異なるのですが、同じ通関案件でも通関業に該当しない運送であるとか保管、作業関係の収入もある訳です。それらの収入は一般的には「通関業収入」には該当しない(あえて言うなら付帯業務)。

 

あくまで通関業務として料金表に記載があるもののみを集計した金額なのですが、(業界経験者以外の方には)感覚的には随分と少ないと感じるのでは無いでしょうか?

 

私自身以前から監督官に年1の通関業営業報告書を作成して提出しているのですが、上記の数値(企業全体の総売上に占める通関業収入の割合)は毎回記載していますが「ウチの会社だけなのかなあ、こんな低い数値は……」なんて思った事があります。

 

数値が高いのが良いとか低いのが悪いなんて事はありません。

 

また通関業の存在が売上的に会社に貢献してないと言うことでもありません。

 

通関が出来なければ物流は止まる訳で、重要な業務である事には違いありません。

 

海上輸送(業)と国内物流(業)のちょうど境目にある業なので、どちらの業界からも付帯業務となり付加価値サービスと純粋にビジネス拡張という観点から進出してくる企業は少なくありません(そのような背景から兼業が増えてくる訳です)。

 

経験からですが、通関業は安定的な利益を確保しやすいと思っています(もちろんマネジメントは重要です)。

 

数値から見ると通関業は少し特殊な業と見えるかもしれませんね。