最近、新人が配属されたので業務分担を再考する機会があった。
部署をゼロから作り上げるのに勉強して試行錯誤を重ねて一定の形にしてからしばらく時間が経ったが、ここで改めて振り返りと検証をしてみたい。
自分の考えているところでは「外へのパフォーマンス」と「内へのパフォーマンス」を良く考えバランスが取れている状態を作り上げる必要があると思っている。
「外へのパフォーマンス」とは顧客対応のこと。サービスの提供。どんなスキルやキャラクターを持った人間が窓口対応を行うのか?
立ち上げた当時と今も考えは変わらないのは「専門知識を有した提案力のある通関士」を窓口にしてしまう事。そして荷主からの依頼の通関業務は全てその窓口で完結してしまう事。
いくつか理由はあるのだが、一つ目は対荷主へのレスポンスが早い事。窓口と実務が別になっていないので、問い合わせに対し時間をおかず素早い的確な回答ができる。分業制を敷いている同業他社とも差別化ができる。通関士なので説得力のある説明もできる。
またサービス(対応)の質を上げる事が期待できるという点。
かなり前に読んだ、ある著名なビジネス本の寓話を思い出す。
産業革命間もない頃の話だったか、木製の椅子を作る職人がいて一人で丹精込めて作り上げて売っていた。商売繁盛し生産追いつかず、機械を導入して部品をそれぞれ作って組み合わせて販売した。ところが売上が一向に伸びない。ふと思案して再度一人で手作りで完結する作業に戻したところ、売上が戻ったという……ザックリとこんな話だったような……。そこで言いたかったのは、一人で最初から最後まで商品を作り上げていくとユーザーに対して気遣いというか細かいところの仕様まで気になって作るようになると。機械化では単に部品を組み合わせるだけになるが、一人で最初から最後まで作り上げる際にはこの場所は手触りが悪いから磨こうとか噛み合わせ部分からバリが出ているとかそういうところに気が回るようになる。そこを購買者は評価してくれる。このようなまとめだった。
全てが正しい訳でもないが確かに一理あると思い、なるべく自己完結型の仕事を取り入れるようにした。
各企業においては客層や企業の社風、社員構成などにより、様々な業務の分担があると思うが、その数だけベターな方法はあると思っているし、環境が変わればまた体制を構築し直さないといけないと思っている。臨機応変が重要。
「内へのパフォーマンス」についてだが、こちらはモチベーションの向上に繋がるものと思っている。
最近組織論の本を読んだのだが、その中のモチベーション理論の中で「職務充実」という言葉がある。これは人の高次の欲求を満たす為に、責任や権限の範囲を拡大して質的に充実させるという考えらしい。
分業だと、自分がそもそも何の仕事をしているのか?意義は何か?と考える機会が増え、仕事に対しての意欲もなかなか上がらない。
自己完結の分担によって、最終的には荷主へ手仕舞い(納品や請求)を自分でする事になるので客先との接点をもったり、業務終了の達成感も得られる事になる。
なお「職務充実」と似たような言葉で「職務拡大」というものもある。こちらは仕事の単調感などを和らげる為に異なる仕事(の幅)を増やすという事らしい。いわゆる横展開というイメージで使い分けが必要だと思う。
以上の理由で、担当窓口には業務自己完結型の精鋭の通関士を置くという事をしている。
最近、働き方改革から始まり職場/会社への不満から転職の流れに繋がっていく話が多いように感じる。
もっぱら、長時間労働と、それに対する待遇に起因するものだと感じている。
個人的には、組織の体制作りである程度は不満を無くす、というか充実感が得られる状態は創り出せるものだと思っている。
給与や労働条件というのは衛生要因と言われ不満が出やすい要因らしいが、それに対しては現場の責任者が対応できる事はかなり限られている。
一方、仕事の(割振した事によっての)達成感や、承認、責任ある仕事の配分などは動機づけ要因(満足をもたらす要因)と言われているようで、この要因を良く考えて組織デザインに盛り込む事が責任者は重要だと思っている。