ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通販貨物の通関

今回は最近の現場の話をします。

 

コロナ感染が社会に影響を及ぼすようになって2年が過ぎようとしています。

 

私の職場の案件も今まではB to Bが殆どでしたが、この2年でめっきり業務量が減りました。これはどの業界においても同じ事が言えるのではないかと思います。

 

我々は物流業なのでモノが動かないと会社の売上が上がりません。モノは = 消費に置き換えられます。やはり景気が良くならないと一般的には物流業も元気にはなりません。

 

モノが動かない。在庫がたまる。保管料も増えるから儲かるのでは?と良く聞かれますが、これは私の中では「健全な儲け」ではないと思ってます。保管料で儲けが出るほどの在庫がある、というのは一般的に言って何かがおかしい。売れなくて在庫が増える、読みを間違えて商品作りすぎて在庫が増えるなど、負の理由によって殆どが保管料が増えるのだと思っています。

やはりお客さまには、沢山商品を作って頂いて、沢山売っていただく。モノが流れ、結果的に我々物流業も活気が出てくる。このような関係が望ましいと思っています。

 

コロナ禍で巣ごもり需要が増えたと言われてますが、物流業の中でも増えているのは「通販貨物」です。通販で扱える商材の取扱荷主は割と好調のようです。

 

私の職場の輸入通関業務を見ていても「これは通販ビジネスの貨物だな」というものが目につくようになりました。

 

通関においてはこの「通販の貨物」はなかなか手こずります。

貨物は少量多品種が傾向であり、多品種ですとHSの検討にかなり時間を使います。また商品情報も少なかったりすると確認作業にまた時間を使うようになります。

 

また税関からは「この件は正規の輸入取引か?」という質問が非常に多いです。

 

なぜ聞かれるか……?

 

ある物流業界誌のページを引用します。

 

http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/3312

 

通関士試験を受験された方は重要項目として勉強されたと思いますが、「その輸入申告の課税価格は課税価格の決定の原則に基づいたもので良いのかどうか?」と言うところを税関は確認したいと言う事です。

 

通販貨物のビジネスにおいてよくあるスキームは、海外の売手が日本の消費者に対して売りが立ったもの(=ネットで売買)を日本におくる場合、貿易(通関)上輸入者がいないと輸出もできないので、とりあえず貨物を引き取るだけの第三者を立てて輸入者になってもらい商品を送る手続きをする。通関は済ませて貨物は物流センターに配送し、そこから日本の消費者に個別に配送される。

 

この輸出者(売手)が立てた第三者と輸出者(売手)間は金銭の流れは発生せず、貨物が流れるだけとなる。

その場合は輸入取引とならず、輸入申告時の課税価格は別の方法で決められる事になる、という事です。

 

税関のHPに詳しい説明があります。

https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1404_jr.htm

 

話をもとに戻しますが、税関の質問はこの「輸入取引」がなされているかどうか?を確認をしたいという事ですね。

 

ですので輸入取引と認められる証明として、輸入者の国内の販売実績(売り先や送金明細)や、輸出者と輸入者間の売買契約書などを税関から求められたりします。

 

よく輸入者の質問で「日本国内で通販をしたらいけないのか?」と聞かれますが、そうではありません。

むしろ今は輸入した貨物を国内で販売する方法として通販の割合が増えてきているような状況です。

そうではなく「輸入取引によらない輸入貨物」が問題で、通販貨物のビジネスにはありがちなスキームであり、もしそれに該当する場合は通常の輸入申告のやり方ではないという事なのです。

 

適正なやり方で申告納税をする必要があり、税関としてはその確認ができるまで質問や資料の提出を求め続けてきます。結果としてかなりの時間がかかり、私の過去の経験ではその作業だけでフリータイムが切れてしまう事も何回かありました。

 

誰でもできる通販ビジネスであってコロナ禍という事もあり、今後も通販貨物の輸入は増えてくると思います。

 

輸入者の皆様はこの仕組みを良くよく理解をしていただき、事前に税関や通関業者に相談をしてスムーズな通関になるように注意をはらって頂きたいと思います。