ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

まず何を最初に教えるか?

企業では定期的に新卒/中途採用や、社内異動があります。自分が所属する営業所や部署に新しく配属された方がすぐに戦力になるように引き続きや教育をしていく事になります。

 

今回はその辺りをお話してみようと思います。

 

私の部署は通関営業所でメインが通関業務です。付帯業務として、通関前後の国内配送や海上輸送手配も行います。社員は完全分業制ではなくお客様を持ち受注から配送完了まで、自己完結型の仕事をこなしています。

そのような背景を前提に話を進めていきます。

 

配属される方のチェックポイントとして、「物流」知識をどれだけ持ち合わせているか?これを最初に観ます。通関知識の有無ではありません。

 

業務分担を考えると自己完結型なので付帯業務も知らないといけません。

 

通関って、もう少し上位視点から見ると「物流」の一部です。「物流」の中での「通関」なので、仕事を上手くこなしていく上では「物流」は必要な知識です。

 

通関(通関士)の仕事をするには通関業者に所属するのが一般的ですが、通関業者は単体でそれを営んでいるケースは少なく、倉庫業だったり運送業だったり船社代理店(フォワーダー)だったりします。

 

なので倉庫業を営んでいる企業で通関業もしているとなると双方の知識を知っておく必要があります。同様にフォワーダーで通関業を営んでいる企業で通関部に配属されればフォワーダーの知識も必要とされると思います。

 

私の所属する企業はメインは倉庫業です。配送も行います。ですのでその辺りの知識は最低限必要です。会社としてサービスを提供しているので、通関だけでなく、その後の配送、倉庫へ納品、保管など、お客様へ提案する。その為には最低限の仕組みを知る必要はあります。

 

幸い社内異動においては倉庫/運送は前職場で経験しているので、足りない知識としてはメインの通関の他は港湾の物流の仕組みと海上輸送の知識を教えるケースが多いです。

 

物流と言っても、国内物流と港湾物流は若干異なります。私の所属している会社の社員が内陸の倉庫から異動してきた際は港湾の仕組みを聞いてビックリしていました。慣習も違います。そこは教育が必要となります。

 

具体的に教える方法としては、用語解説と現場同行、両方行います。良くネットやテキストで物流や通関(港湾物流)の仕組みの説明を目にしますが、あれはあくまで概念。物を動かす業界です。実際に現場に行って、何が行われているのか?どういった事をしているのか?実際の貨物はどんな風になっているのか?それを取り扱っている作業者はどんな事をしているのか?作業にどれだけ時間がかかるのか?……。仕事を円滑に進める為、お客様にベストな提案をする為には自分の目で見て物流を理解する必要がある!自分はそう思っており、そのように教育を進めています。

 

以前採用した方ですがそもそもが物流業未経験者で、倉庫、トラックなどから説明しないといけない状況でした。「4tトラックって?」という質問。多分口で言ってもイメージ湧かないと思ったので現場に連れて行き、トラックの車格、倉庫の作業、フォークリフト、荷卸しや積み込み、全て見せてきました。

 

まずは広く物流というものの理解。企業において主業として展開しているサービスの知識習得は必須。フォワーダーであれば海上輸送の仕組みや手続きになると思います。

 

貿易実務。そもそもこの分野は物流業というよりは商社やメーカーの荷主側に需要がある知識なのだと思います。

ただ、その中で私が物流業者(通関業者)に必要だなと思う知識はインコタームズですね。これは必須だと思います。通関士試験ではそれ程問われませんが現場ではこれを知らないと円滑に仕事を進められませんしトラブルも起きかねません。加えて売買契約や決済の種類、取引の流れを抑えておくと後々仕事に使えるかと思います。

 

とにかくこの業界は専門用語が多すぎます。またその用語も簡略化された表現だったりすると良くわからなくなる。その中でも貿易実務のテキストに出てくるような用語(物流面)はまずは必須で覚えておくべきものと私は思っています。

 

まとめますと、通関部署に配属されても、まずはその前後のフロー(物流全般)の仕組みや知識を教えて全体像をイメージさせる。それができた後に狭い範囲の本業となる通関業務の教育を施していく。そのような流れになります。

 

木を見て森を見ず。これは仕事をつまらなくする行為だと常々思っています。まずは全体の中で自分の立ち位置がどこにあるのか?その認識が必要。通関というのは物流の中でほんの一部分(でもとても重要な部分です。ここを上手くクリアしないと物流そのものが止まってしまう)。

 

用語や仕組みを学ぶのに何を使うかという事ですが、大手物流企業のHP等に仕事で使えるような用語集やフロー図が掲載されてたりします。ジャストプロやミプロにも同様にあるので参考になります。

 

書籍では、最近出版された通関ビジネス実務検定は業界未経験者や新人にはとても良いテキストだと思います。特にテキスト後半部分ですね。

タームをまずはざっくりと体型的に習得したいのならば貿易実務検定かなと思います。タームの説明に関してはネットで数多のサイトがあるのでそちらでも学べます。

通関業者に勤務するのであれば、まずはそこからのスタートで大丈夫かなと思っています。