ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通関業者と自社通関:その2

こんにちは。

 

今回は自社通関についてお話ししてみたいと思います。

 

今まで荷主側にいた事がない自分なので想像の域を超えない話もあるかもしれませんがご容赦下さい。

 

「自社」で「通関」という事ですから自己の法人において輸出入手続きがある場合に、通関業者に委託せずに自ら通関手続きを行う行為の事ですね。

 

その場合は、もちろん通関業の許可も必要ありませんし、通関士を設置する必要もなければ書類を審査させる義務もありません。

 

前回もお話ししましたが、通関業はあくまで商いであり、他者の依頼によって通関手続きを代行するものです。ビジネスで看板を掲げてるので幅広く通関に関する知識を有してないといけませんし、不測の事態があっても的確に処理をしていかないといけません。

 

語弊があるかもしれませんが、自社通関をする際は取り敢えず自社の取扱商品の通関手続きだけを完遂させればいいわけなので、必要でない知識は(あるに越した事は無いのですが)無くても問題ありません。

 

その自社通関をしようとする企業の取扱商品のアイテム数がどれくらいあるのか、通常の手続き以外に何か必要なものはあるのかによるのですが、ほぼ決まりきった商品であれば手続きも同様なので割と自分で通関するのは簡単なのではないか、と思うのはそれを専門でやっている人間が見るからでしょうか(笑)。

 

では、なぜ企業は通関業者に通関手続きを委託するのか?という事ですが、個人的には費用対効果なのだと思っています。

 

通関業者に通関手続きを委託しないといけないという法律はありません。自社で通関をするメリットがあるのならばそれを行うはずであり実際に自社通関をされている企業もお目にかかります。

 

判断材料としてはやはり費用なのだと思います。自社の通関手続きのボリュームに対してどれだけの人材と経験が必要で、トータルどれだけの費用(人件費、設備費等)がかかるのか。それに対して通関業者に委託した場合の費用はどれくらいか。天秤にかけるわけですね。

 

もちろんそれだけの理由で決める訳でもないと思います。

 

自社で通関手続きを行えば、ひょっとしたら現行の委託通関業者よりも早く手続きが終わるかもしれない。また、自社社員の教育にも繋がるし本業へのシナジー効果も得られるかもしれない。

 

一方、通関業者に委託する事も単に「費用/下払い」が増えるという見方だけで無く、フォワーディング機能や倉庫機能を持つ通関業者であれば物流の効率化も狙えるしそれに関しての情報収集や視野の広がりも期待できる。外部視点を導入できれば広い意味での物流最適化も検討しやすい。

 

判断材料は色々とあります。

 

 

感覚的な話ですが、以前よりは自社通関は増えてきたように思います。NACCSが荷主も引けるのが認識され始めたのも一つかもしれませんし、案外通関手続きは難しくないという認識を持つ企業も増えてるのかもしれません。背景には通関業者にいた通関士や従業員の転職もあると思います。一昔前の転職事情や雇用の変化の影響ですね。

 

 

先程の費用対効果の話ですが、高度経済成長期には少量品種大量生産で物流業者もそれを取扱う事に慣れてました。

通関に関しても、同じアイテムの輸入や輸出が月に何百件もあった時代です。

こういうケースにおいては、費用だけを考えると自社で通関手続きをやってしまった方が効果は得られやすい。

 

今は通販含め、多品種少量ロットの時代。物流の中での通関も同様です。

通販に限らず一企業においての取扱品目も数世代前と比較すると増えている企業が多いのでは無いでしょうか?商材が増えればそれだけの商品知識も必要になりそれらに関わる法律も抑えておく必要はあります。自社で通関しようとすればそれらが課せられます。

 

先にあげた自社通関での通関士の存在ですが、設置義務が必要ないとは言え通関士を雇用して通関手続きをさせる事にデメリットはありません。素人が一から勉強するよりも通関士有資格者(試験合格者)がいた方がスタートは早いでしょうしある程度の税関対応も期待できます。

ただやはり実務を経験してないよりは経験者を充てた方が安心ではあります。

ちなみに自社通関においては、通関士というものは存在しません。試験合格者はいますが、通関業者において財務大臣(税関長)の確認を受けたものが「名乗れ」ます。上記、通関士という表現を多用しましたが説明上わかりやすいと思い使いました。「通関士経験者」に置き換えて読んで下さい。

 

これからは働き方や考え方も多様化してきます。通関士試験に合格された方は、通関業者のみでなく一般企業においてもやりようによっては活躍できますし、通関業の免許を持ってない企業に就職して通関業を立ち上げたりと、意志の力と情熱でいかようにでも仕事はできるのではないかと個人的には思っています。