ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通関とAIについて

AI(人工知能)がヒトの仕事を奪う、と言われ始めて数年が経ちます。

 

今回は自分なりの通関(業、士)の仕事とAI、将来について考えを述べてみたいと思います。

 

結論から言えば、通関(業、士)の仕事は現環境下では無くならないと思っています。そして環境が変わりAIが職場で活躍する時代が来るのも数十年先と思いますが、それでも全ての仕事がAIに奪われる訳でもないと思っています。

 

* HS検討について

通関(業、士)の仕事で代表的なものであり、この作業が効率化される事で現場の方はどれだけ時間短縮になるかと思われているのではないかと思います。

商品の用途、材質によってHSコード(関税率)を決定していくのですが、一見単純でAIで対応できると思われます。

 

AIに関税率表の解釈や解説を記憶させ、当該商品の用途や材質などの情報を基に問い合わせさせる。

今の世の中に出回っている商品は日雑においてもメインの用途は何か?が人によって判断しづらくなっています。主たる材質、製造工程、用途、かなり複雑なケースがあります。

問い合わせさせる商品が個人の主観を基に捉え方が様々になってしまうとAIから弾き出させれる回答もそれに従って異なってくるのではないかと感じています。

 

そもそも解説をみてすぐに答えが出るような商品なら良いのですがそれが難しかったりするので現場では教示に出したりする。

開示OKのものは税関HPに教示結果を見る事も出来ますが、商品説明では同じ文句でもHSが異なるものがあるのはご存知の通りです。

判例を膨大にAIに記憶させても、どれだけの商品情報を提供する事で正確なHSが弾き出されるのか……疑問と同時に興味もあります。

 

また商品名だけで判断するというのは間違いが発生する可能性があります。

この荷主名の場合のこの商品名はこのHSコードと記憶させる。少しでも材質や用途が変わるようなことがあれば違うHSコードを検討して新たに記憶させる。こう言うマスター情報を登録しての運用が必要になってくるのかもしれません。

荷主から見て二つ比べてもほぼ同じ商品と見えても、通関現場から見るとHSコードは異なる事例というのはざらにあります。

 

AIを導入するとなった際に運用方法を考えるに、固定客のもと商材がほぼ変わらない場合はイメージつきやすいのですが、通関業者はさまざまな客層と商品を相手にしています。

 

最近はB to BよりもB to C、通販商材の取扱荷主も増えています。またビジネスチャンスも増え誰でも輸出入をするようになり、通関側から見た新規の輸出入者が激増してます。

これは通関という行為に慣れていない荷主や通関書類の重要性を認識していない荷主も同時に増えるという事でもあります。

 

そういったケースの通関書類を見ると、商品名と実物を比較して「何でこんな商品名をつけてくるのか?」というものが沢山あります。

そしてその荷主はリピート率もそれ程高くもない。数回の輸入で終わってしまう。

 

そのような荷主は今後沢山出てくると思うのです。

 

激増する荷主の数だけ、ルールが存在し、イコール書類の体裁や商品名の記載の仕方の違いもある。国が異なれば文化も違ってきます。商品の捉え方も変わってくる。

 

これらを全てAIで対応できるのか……?と言うのが今現場にいる者の感想です。

 

 

* 通関業というビジネスについて

AIの普及で通関業というビジネスが無くなるのか……?これについては、自分の中でも答えが見つけられていません。

 

上記のHS検討の項目で「無くならない」と言っているのに?と思われるかもしれませんが、それは通関知識を持つ人間の必要性の話でそれが通関業者の存在価値とイコールになるかと言えば別の話です。

 

貿易量がそれ程でもない時は納税方法は全て賦課課税方式で税関が決めていたものを、貿易量が増大しその方式では対応できなくなったので申告納税方式にして通関業法を定め許認可制の通関業者作ったのだと思っています。

 

今後の環境の変化で、賦課課税の時代と同じくらいまでに貿易量が減る(少し考えにくいですが)、AIを導入する荷主が増え自社通関するケースが増える、というような事があれば通関業者の存在意義は今よりは薄れるかもしれません。

 

AIを導入しようとする企業は通関業者だけではありません。荷主側も会社として導入する事も考えるでしょう。たまたま輸出入手続きにおいて自社でAI活用すると通関業者に依頼しなくても済むのがわかれば自社通関への流れが進む可能性もあります。

 

そうは言っても手続き関連は知識も必要なので、通関業者にいた経験や通関士試験で勉強した知識を持ち合わせている人は、その時の荷主側での貴重な戦力になるかもしれません。活躍する場所が通関業者から荷主側に移行するという事です。

 

また今後の環境の変化で通関士の独立(通関業者の確認を受けなくても通関士としての名義の効力を発揮)となれば、また通関業者の環境も変わってくるかもしれません。

 

 

今後の環境の変化は我々が想像する事ができないものだと思います。

 

私がこの業界に足を踏み入れた時はまだナックスが導入されはじめの頃。業務をやっていて「数年前はこれ全てマニュアル申告してたのか?」と思うと劇的な変化だなと感じた事がありました。

この数十年の間に現場では大分ペーパーレスが進みました。オリジナル書類の持ち込み等は今は殆どありません。

先日の記事で、とうとうBLの電子化が始まるような事も目にしました。ちょっと前までは考えられない事です。まだ検討段階でしたかね……このような事を思い返すと、これから20年先がどのようになっているか、見当さえつきません。

 

ただその環境の変化に受け身になって仕事をするようでは人生つまらないものになってしまうと思っています。

新しい環境になればまたそこでビジネスチャンスが生まれる可能性かある。会社としても個人としてもこれはビジネスにならないか?とか……

そういった目で変化を見ていけばワクワクするような事を見つける事はできないものか?

そう思っています。

 

このAIについて今後も折にふれて取り上げていこうと思います。