ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

検査と納期スケジュール

こんにちは。

今日は輸入における税関検査と納期との関係、それについての通関業者の仕事の進め方を少しお話します。

 

 

まず、「検査」という表現を使う場合、何の「検査」なのか?をしっかり把握していただいた方が、勘違いや誤解が生じないと思いますのでここで簡単に説明をします。

 

時系列でいえば(もちろん該当する商品だけですが)

○厚生省管轄の輸入食品等申請届に必要な検査

農水省管轄の、植物の輸入禁止品等輸入検査申請に必要な検査

農水省管轄の、輸入畜産物検査申請に必要な検査

等々……いわゆる他法令関係の検査が「必要に応じて」あります。

それらを経て問題が無い貨物は続いて税関への輸入申告の際に、場合によっては指示される

○税関の検査

があり、これも問題なくクリアされたら(納税等の諸手続きを終えて)輸入許可となって顧客から指定された場所へ納品となります。

 

新規で案件をお話いただく際に顧客と話をしている中で、よくこの他法令の検査と税関検査を区別なく話をしている時があり、その案件自体のフローが理解できない時があったりします。営業担当として顧客からヒヤリングをする際は注意が必要ですし、顧客側も区別して業者に話をする必要があります。各検査の業務の段取りが全く異なります。

また既存通関業者から「検査実施」の業務報告を受けた際、「何の検査か?」しっかり説明を聞いておく事も良いと思います。上記の検査の種類が頭の中で整理されていれば、輸入許可=納品までのタイムスケジュールがおおよそわかろうかと思います。

 

 

さて、納期との関連で話を進めます。以下は一般論というよりは私が行なっている進め方です。

 

① 上記の他法令に関わる検査についてです。

まず事前に顧客からの案件の概要のヒヤリングをしっかりとしておきます。その時点で検査の有無判断や検査のおおよその実施日を想定しておきます。入港日のズレや各関係業者との調整等で、正確な納品日の設定はできませんが、おおよそこれくらいには納品できるかなと顧客側に話をしておきます。そうすると顧客側も販売の予定を立てやすいのではないかと思っています。

実はこの他法令関連の検査も、各法令ごとに色々な事が起こり得ます。

例えば輸入食品申請ですが、申請の前に商品によっては必要な分析(これを一般的に検査と呼んでいる)をするのですが、ケースによっては厚生省(食品監視課)の担当官が現場で現物確認をする場合もあります。

申請してみないとわからない、という面もあるので当初の想定した納期からズレる場合も少なくはありません。

ですのでこの辺り(予定は確実では無い事)はしっかりと顧客側に事前に説明をしておきます。

 

事前にヒヤリングできている案件は、入港する前にほぼ段取りが終わっているので淡々と業務を進めるだけです。このケースは納期は早い段階で設定でき顧客に報告する事ができます(もちろん続いて説明をする税関検査がある場合も踏まえての報告です)。

 

逆に、全く事前連絡がなく既に入港済みか明日にでも入港する案件の場合。こちらは今から他法令の申請準備や(必要なら)検査の段取りもするので時間がかかります。調整先の関係各社(倉庫だったり分析機関だったり)も予定があるので、後手後手に回ってしまいます。

この時は顧客へ「準備期間があってこそ最速で実務を進められる」という事をしっかりと説明をして次回以降同じ事が起きないよう備える……。

 

ただ、入ってきたものはいずれは処理しないといけない訳ですし、検査(=分析等)に時間がかかるという事はなんらかの(余計な)費用もかかるということなので、できうる限り最短最速で進めます。ここは顧客側と気持ちを一方向にして一緒になって処理をしていく空気を作ります。

 

 

② 続いて税関検査です。

私がいる所は東京なのでその環境下での進め方です。

 

まず税関検査には大まかに、X線検査と持ち込み(見本)検査があります。

X線検査は貨物を丸ごとX線に通すわけですがもっぱら社会悪物品が紛れていないかの検査、たまにコンテナを開けて現物確認も行います。

持ち込み(見本)検査は現物そのものの検査、HSが妥当か?原産地表示は?知的財産権侵害物品か?等の検査を行います。

これらの検査、東京管内(港)ではすぐに検査を行えません。税関からの指示があった翌日から行うのが最速となります。

例外もあるのですが、翌日が最速の大きな理由として東京港の抱える膨大な貨物量による所が大きいのではと思っています。

 

私はそれらを前提として納期を組んでいきます。

輸入申告をして、税関の書類審査があり、検査が必要な場合はその連絡が来る時間を読み、検査の段取りを行い、検査を行う。

例えば月曜朝に申告。当日の昼くらいまでに税関の書類審査。それから検査の場合は検査実施の連絡がくる。そこから翌日火曜日の検査実施への段取りを進める。火曜日に検査実施。当日輸入許可。そうすると運送業者が貨物をピックアップできるので翌日水曜朝には納品できる。

顧客へはいつも検査ありきのスケジュールで話をします。検査の有無は事前にはハッキリと分かりません。こちらも申告してみて初めて判明するものです。

ただ確率としては過去の経緯から見当はつくかもしれませんが保証はできません。根拠のない話をして納期が守れなかった場合はかえって顧客に迷惑をかける事になります。

今まで10回申告して1回も検査がなかったとしても、検査は常にあるもの。その認識下での納期設定。配車もそれに従って組んでいます。

通関に限らない事ではありますが、顧客で一番多いリクエストが「最短納期」。

予想される検査を踏まえた上記のスケジュールが「最短」であり「最適」なスケジュールと思ってます。

 

たまに検査で簡単に解決できないトラブルに見舞われる事もあります。例えば原産地誤認でラベル貼り作業が発生したり、知的財産権侵害物品の可能性があるので照会に時間がかかったり……そのような問題は最早輸入する前に解決しなければいけない問題なのでその場ではどうしようもありません。顧客にはしっかりと説明をします。

 

 

顧客に満足してもらえる仕事をする為に、自分も気持ち良く仕事をする為に、ゴール(納期)を見据えて仕事をする事は言うまでもなく大切です。

ゴールから逆算して時系列で起こり得る事象を洗い出し、スケジュールに盛り込み、達成するには今この時点で何が必要で何をすべきか……という視点で仕事を進めていく。

何も通関に限った事でなく、自分の将来、キャリア形成にも必要な考え方でもありますよね。