こんにちは。
通関士試験の勉強内容と通関現場の比較という事で、前回の続きで話を進めて参ります。引き続き関税法の内容になります。
①輸出してはならない貨物/輸入してはならない貨物(関税法69条の2、69条の12)
輸出入できない貨物として条文に列記されていますが、感覚的に「常識だろう」というものは比較的覚えもしやすくピンとくるのではないかと思います。
試験ではこの貨物類は暗記するしかないですが、その中で特許権、実用新案件、意匠権、商標権、著作権等の特許権侵害物品:知的財産権侵害物品に該当するか否かの認定手続きのフローを覚えるのがとても大変です。
私の持っているテキストでは重要度としては上から2番目なのですが、通関現場では重要度はかなり高いと言っても良いかもしれません(もちろん個人的な意見です)。
現場では、荷主から通関書類をもらった際に色々な角度で書類を通して商品を確認するのですが、その中の一つにこの侵害物品の確認も含まれます。
税関のHPに
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/index.htm
差止申立の一覧が記載されています。通関書類と一覧を一通り確認をして、該当しそうなものは荷主と確認をし場合によっては税関に相談をします。
また書類上で確認が出来ず申告後の税関検査で確認が必要な商品が出てくる事もあります。
原因は輸入者がこの差止申立そのものを確認せず輸入してきたからという理由が最も多いように思います。
申告前でも申告後でも、認定手続きが始まってしまうと許可までに相当な時間と費用がかかってしまいます(許可にならない場合も出てきます)。
もちろん事前に差止申立に該当するかもしれない商品だと輸出入者が認識していれば(そして通関業者に伝えていれば)それを踏まえた準備やスケジュールを組む事が出来るので慌てる事もありません。
また上記の例で、認定手続きに入るかどうかで通関がストップすると大概輸出入者はパニックに陥ります。当然です、差止申立自体を知っていればその様な事にはならないですね。
その時に輸出入者にわかりやすく丁寧に、どうして通関がストップするのか?認定手続きとは何なのか?の説明をしないといけません。
この業界に入りたての頃、すぐにこのケースに出くわした事があり説明するのに苦労しました。勉強した事を棒読みで説明しても自分が腹落ちしてなければ相手も腹落ちする事もありません。何回か経験するうちにそれなりに説明できるようになりました。
案外、この差止申立(疑義)貨物の通関は頻度は高いです。現場でも引き出しとして準備しておくのが良いでしょう。
②証明又は確認(関税法70条)
いわゆる他法令関係ですね。証明又は確認を税関に提示しないと許可をもらえないという内容です。
これ、現場では覚えておかなければいけない条文の中でも鉄板です。
食品衛生法や植物防疫法等が代表的ですが、
税関HP
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1801_jr.htm
ご覧の通り結構あります。
輸出入者から通関書類をもらい、商品の内容を確認しながら他法令に該当するかどうかの確認を行います。他法令名だけではなかなか判断できず、どういった貨物が該当するのか、掘り下げて丹念に調べていかないといけません。思わぬところで該当する事もあります。基本的なフローとして、該当するものは全てクリアした後に輸出入申告に入ります。
また、これも良くある事例ですが、輸出入者が商品自体を良く把握してない状態で、通関業者でも書類上で確認できず、申告後の税関検査で他法令抵触貨物がでる場合。
もちろん通関許可にはならず、急いで他法令申請をしてクリアにしてから税関に証明をして許可を貰います。場合によって他法令がクリアにならない物もあります。勉強した通り許可にはならないので、その時は滅却か積み戻しとなり輸出入者に指示を仰ぎます。
③原産地を偽った表示等がされている貨物の輸入(関税法71条)
この③と上の②は、現場では覚えておかなければいけない条文です。発生頻度はかなり高い。現場での税関検査での職員の確認項目の一つとなっているのではないかと思っています。
誤認を生じさせるに認定されてしまえば(これについてはほぼこちら側の主張は通らない)、そのままでは輸入できないのですが、私の現場経験の中ではほとんどが原産地表記のシールを貼る作業を経て輸入許可になります。条文では、表示を消す、訂正する、貨物を積み戻す、とありますね。
たまに、もともと原産地表記はあるのだがその表記が小さすぎて見えない(又は見えにくい所にある)し、その他の表記で誤認を生じさせる、という事で原産地表記のラベルの貼り直しを命ぜられたケースもありました。これは訂正となるのかもしれませんね。
この辺りの原産地表記の輸入者への説明は条文だけでなく、現場の経験を踏まえての説明が必要になってきます。原産地表記は必須ではない、という所がかえって輸入者に混乱を招く場合もあります。
今回はここまでとします。次回も関税法を続けます。