ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

存在意義について

通関業を立ち上げて実務もまだ怪しい腕前の30代前半の時。

創業期なので、まずは顧客獲得、という事でめぼしい客先を回っていた頃の話です。

 

ある有名なホームセンターの重役さんに営業に行った際に、

 

「どの業者を使うか?ウリが無いといけないし、こちらのニーズもある。ガソリンスタンドと一緒だよ。どこでガソリン入れたってあまり金額変わらない。どこで入れるか?じゃないか?」……

 

なんだか、わかったようなわからないような……当時の、よく通関もわからない若僧(私の事です)は愛想笑いでごまかし早々に退散してきました……(それでも後日受注には漕ぎつけましたが)。

 

 

今でもこの時の事を思い出す時があります。

 

 

仕事を自分の為にやってないか?

客先の為にやっているか……?

 

通関をやる前は倉庫現場で仕事をしており、文字通り倉庫の中での業務なので「外界」との接点はほとんど無く、年齢も幼かったので仕事について深く考える事もありませんでした。

 

しかし通関の仕事をするようになって数多い同業者と関係を持つようになると、その中での「比較」という事を意識するようになりました。

 

その「比較」の中で自分が思った理想像は、「通関という小難しい仕事をファインプレーで何事もなかったように捌く事」「それができる企業、できる通関士」である事。

そしてそれを目指そうと思って今まで仕事をしてきました。

 

どうも営業をしていても客先から「通関ってよくわからない」「担当事務員に全て任せている」「今委託している業者に丸投げ」という類の反応が多く、振り返ってみると傾向として割と小ぶりな中小企業に多かったように思います。

その企業の方々の一番のニーズは「早い通関、手間がかからない通関」「加えて安ければ言う事無い」事だと感じました。

これは別に周りから非難されるものではなく当たり前の事で、腹落ちする話です。

元から通関という専門的にすぎる業務はなるべく時間をかけたくないというのが、人的に余力がない中小企業の方々の本音ではないでしょうか?

ですので自分は通関に入る際は、質問は必要最低限、回数もなるべくまとめて一回で、という意識で取り組み、以降も所内全体へ意識づけを行いました。

 

通関業法上には冒頭に「適正迅速」に行うように定められていますが、適正と言うところを求めすぎて、質問が細かかったり、深く掘ったり、おまけに五月雨のように何度もしてみたり……そういう業者もあると聞いた事もあります。

背景からも、通関業は税関からその業の許可を受けており、誤謬が多い通関業者は業の存続も危うい………という意識も働く事は、同業として良くわかる話です。

 

ただ、上記にあげたこのような仕事をする業者、担当者は私は客先のニーズを満たしていないと思っているので、そうしないように自己を戒めています。

 

誤解の無いように付け加えますが、何もわからないところを確認せずに業務を進めているという事ではありません。

外していけない所はしっかりと抑えます。質問しなければいけないモノはしっかりと質問します。その時は、なぜ質問するのか?その背景もわかりやすく専門用語を使わないように話をして理解をしてもらうようにしています。

そもそも通関業者は間違いがあってはいけない業者で、それが「当たり前のように」求められる業者であると私は思っています。

ですのでそこについての客先からの評価はあまり期待はできない。当たり前だから。

従ってその間違えないように進める為の質問が度を過ぎると(量や頻度)、あまり評価は良くないのではと思っています。

 

税関から許可は得ていますが、あくまで「業」であり商売です。客先(ニーズ)あってこそのものです。そして客先によってニーズは様々。

適正と迅速、バランスが大事と思います。

 

 

ある同業者の話。フォワーダー勤務の方ですが責任ある役職の方で、私と年齢も仕事熱量も同じくらいで気が合う方でした。

その方も部下の教育に際しては

フォワーダーなんて正直なところどこでもあまり変わらない。そんな中で我々が存在意義をどこに見出すのか?」という檄を飛ばしたという話を聞きました。確かに通関業者以上にフォワーダーって差別化が難しいように個人的に今でも思います。数ある業者の中から自分(自社)を選んでもらうにはどうしたら……これはどの業界でも同じ話ですね。

何も「通関業者だけが特殊な事情を抱えてる訳ではありません」。

 

ちなみに上記に挙げた理想像のくだりで「ファインプレーを何事もなく処理をする」は、確かある偉大な野球選手の言葉だったような気がします。その後に「それがプロの仕事の仕方だ」という言葉もあったような……

 

それを追い求めたいと思っています。