以前、申告区分について簡単にお話しさせて頂きました。
以下は何の裏付けもありませんが、通関業者に数十年いた者の経験則からの話です。
荷主側が通関業者に輸出入申告を委託した際に先方から結果として、通関許可になりましたと許可書を送ってきたり、書類審査になったので質問がありますとか、税関の検査になりましたとか、様々な連絡が来ます。
オンライン(ナックス)で申告をした際に、税関がどのような扱いをしたかの「区分」というものが即座に通知されます。
区分1=通関の許可(許可書がすぐに排出される)
区分2=書類審査(税関側に通関書類を提出して審査してもらいその後問題無ければ許可となる)
区分3=(税関の検査扱い。必要とあれば検査を行いその後問題無ければ許可となる)
という内容です。ここまでは以前にお話ししました。
荷主側から見れば、なぜすぐ許可になるのか、いやなぜ税関検査になるのか?が不思議に思われる方もいらっしゃると思います。検査になれば納期が遅れる可能性はあるし検査にかかる費用もバカになりません。検査は無い方が有難いと思われるでしょう。
その区分の違いの理由の話です。
申告をするには必要な情報を入力する必要があるのですが、上記の区分に影響するかもしれないという情報は、輸出入者、商品、仕出地(輸入の場合)の3点がイメージとして大きいです。
①輸出入者
今まで輸出入の実績がない方が輸出入をする場合、殆どが初回に検査を受けます。書類審査で終わる場合もありますが検査の確率は高いように思います。一方で沢山の実績がある輸出入者の申告はその輸出入頻度に対して検査は限りなく少ないです。これは輸出入者に要因があると捉えても良いかと思います。
輸出入者に輸出入そのものの実績が有るか無いかと、商品自体の輸出入の実績が有るか無いかも同様です。今までに沢山の同じ商品の輸出入実績が有るのだけれど、急に全く違った商品を輸出入した時、これも傾向として直ぐには許可にはならない様な気がします。
②商品
通関業者ではこれを「HSコード」に置き換えて話を良くします。HSコードとは、商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)で定められているものです。要はこの世の全てのものはこのHSコードに置き換える事ができるという事ですね。
HS(以下商品をHS)によって即時許可になったり書類審査になったりするというイメージも個人的にはあります。
例えば……HSによっては他法令(関税法70条)が必要なものがありますが、それが申告の際に具備されていないと書類審査になりやすいイメージがあります。(これについては誤解を与えやすいので次回以降に別のタイトルでお話しします)
また、税関のデータベースの中で申告(HSの分類)に間違いが起きやすい商品というのも存在しそれも書類審査になりやすいように思います。
これは商品分類がHSコード上で細かく設定されているものですね。例えばアパレルはそのケースに該当する様に思います。
HSは税率と紐ついています。税関の存在意義の一つに税の徴収があります。そう言った観点でも間違えやすいHSは良く観るという事なのかもしれません。もちろんこれは上記の①にリンクします。そのようなHSでも輸出入実績が沢山あれば時間と共に即時許可に近づいていくと思います。
③仕出地(輸入の場合)
同じ商品を輸入するにしても特定の地域からの輸入については、即時許可になり難いイメージがあります。治安が悪い国、麻薬や阿片などの薬物を輸出しやすい国からの貨物は水際防止の観点から検査になっても不思議では無いですね。
以上はあくまで現場にいる、視野がそれ程広くは無い業者からの話です。
輸出入者でも我々業者でも、税関に対して「検査になる理由」や「どう言う時に検査になるか?」を聞いても教えてくれるはずはありません。世の中に悪い事を考える人もいます。検査の時期が分かってしまえば……裏もかけることにもなりますしね。
我々が思っている以上に、何がトリガーになって書類審査になったり検査になったりするのか……見えない所に沢山の要素があるのだと思います。上記の話はあくまで参考程度に留めておいて貰えればと思います。