ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

納期について

世の中の全ての仕事は締切(納期)があり、時によっては時間との勝負になる事もあります。

 

経験値が多く「引き出し」が多いベテランでも、時間に追われる事は多々あります。

ベテランはまずはそういう状況にならないように先手先手で仕事を進めていく。万が一そういう状況になってもそれを俯瞰的に見て冷静に分析をして手を打っていく。気持ちが焦ってしまったら事故にもなるし他の仕事や周囲への与える影響の大きさも分かっています。まずは気持ちを落ち着かせる事。それが一番大事だと知っています。

 

 

とはいえ、客先から急に依頼があった案件処理、例えば輸入なら明日までに許可にしなければならない案件。輸出ならカットが今日や明日などの案件。通関の仕事を経験していれば誰もが出くわします。おまけにアイテム数が多かったりした時の気持ちの動揺は……。

 

 

私もそのような状況はそれなりに経験し、またそれ以上に過去に部下達が経験してきたのを目の当たりにしてきました。

 

部下達(自分以外)に対して自分が行ってきた事はまずは話をするという事でした。状況を報告させる。いつまでに仕上げなければいけないのか?アイテム数はどれくらいあるのか?実績の有無は?話をしている内にだんだんと落ち着いてくるものです。これが第一段階。次に自分も書類を見てそのボリュームを検証する。2人がかかりで方がつくようなら急いで段取りし2人で書類作成。相手の力量見て出来そうならいくつかアドバイスして任せる。

当人が一番不安になっているのは「(納期に)間に合わなければ責任を取らされる」と言うところです。良くも悪くも客先の依頼に忠実なのです。

 

しかし……それは少し違う。努力しても間に合わないものはあります。案件の内容について納期に対して時間がどれくらいあるのか?これは非常に重要です。

 

どの仕事もそうなのですが、通関に関しても同様です。焦って処理を行う事で法令違反を引き起こしてしまう。いくらマニュアルがしっかりと整備されてても「納期がここまで」と指定されれば誰もが普通の状態ではいられないと思います。顧客第一という教育を企業からされていれば尚更です(顧客が大変重要だという事はその通りです)。

 

気持ちを落ち着かせるためにはまずはそこを取っ払う事だと思って私は行動しています。

「あー、この案件は、許可希望日までには処理は難しいね。こちらから客先には話をするからそれは気にするな。まず落ち着いて間違いないようにいつも通りやって。とりあえずは進めてみよう。間に合わないからできない、と返さず、やるだけやりましたという姿勢がここでは大事だから。」と話をします。

大体これで実務担当は落ち着いて仕事を進めています。

 

ここから先は責任者が客先に説明をする事になります。

 

実は客先もそれが無理なお願い(作業依頼)である事がわかっているケースが結構あるのです。また、通関業務の内容や作業フローを知らない方でも説明をするとわかってくれる人が殆どです。

 

そのあたりを全く理解せず(できず)、一方的に納期を迫ってくる客先はほんの一部です。その依頼があまりにも強烈なので、ほんの一部の存在感ではなく大きな存在感として捉えてしまいがちなのでしょう。

 

 

さてそこで、それならどれくらいのタイミングで依頼をすれば間に合うのか?と客先と業者側でコンセンサスをとっておく必要があります。業者として納期の補償というのはビジネスでは必要な事です。

 

この、案件(書類)をいただく際の納期に対してのリミット日というのは、通関業者が全て同じ対応かというとそうではありません。いろいろな要素があり業者によってまちまちです。

 

私が思うに、一番大きな変動要因は港(税関)かと思っています。

納品日(カット日)が決まっている場合、逆算していつの日に申告を入れなければいけないかと現場(担当)は考えて準備をします。申告を入れたら書類審査(区分2)か検査(区分3)になる事を想定して担当は進めるはずです。初めから簡易審査扱い(区分1)になる事を確信して進める担当はいないと思います。

税関の書類の審査のスピードは大きくは変わらないのかなと思っています。取扱貨物が多い東京は遅く、少ない地方港税関は早い、という「傾向」はありません。業務量に従って職員も配置されます。ただ港別の取扱貨物の傾向による審査のスピードの違いはひょっとしたらあるのかもしれません。

 

税関検査の対応について、これが大きく異なるかと思います。東京では税関から検査の連絡があった場合、どんな種類の検査でも当日対応は物理的に難しい。x線検査は既に予約が一杯、見本持ち込み検査もコンテナシフトの当日実施はまず不可です。なので検査は翌日以降となる。

横浜ではどうやら異なるようです。同日の検査連絡があっても対応できるケースが多いようです。従って納品日に対して申告を入れるリミット日は東京よりも少し遅くても間に合う感じがしています。

 

ですので自ずと、納品日やカット日が決まっている案件については自社以外の要因をまずは考慮した上で最低限の作業依頼日(リミット日)を設ける。そこを過ぎての依頼は「努力目標として頑張る=間に合うかの保証はできない」となります。ここをハッキリさせておけばある程度は急ぎの案件も心理的な負担が軽くなります。

 

 

たまに客先の方で通関を知っている方(我々業者からすると知ってる内には入らないのだが本人はよく知っていると思い込んでる)からの依頼で、区分1になる前提で(それを納期に盛り込み)依頼がくる事がありますが、基本的に区分1や区分2になる予想などあてになりません。そもそもその区分が事前の傾向から「確実にわかる」ようであれば、(悪い事でも)何でもできてしまいます。

当たり前ですが、われわれ通関業者も書類審査や税関検査がある前提で、商品確認をし、書類を作成をして申告を入れています。長く業務をやっている通関士でさえ「この申告は120%区分1だ」なんて保証できる人はいません。どんな案件でも作成には一定の時間はかかる。そして税関の書類審査や検査の可能性が常にある。そんな感覚で仕事をしています。

 

依頼があった案件のアイテム数が多数あった場合。これについては色々あるのですが、また別の機会に話をしたいと思います。