ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通関士試験と通関現場:その3

こんにちは。

 

前回に引き続き、試験で問われる内容と現場の業務の比較について、深すぎずわかりやすく話を進めていこうと思います。

 

①課税物件の確定時期と適用法令の日(関税法4条1項、同じく5条本文)

 

私の持っているテキストでは最重要項目として記載があります。初めて試験の勉強をした際は、まるで砂を噛んでいるイメージで……さっぱり解らず、何はともあれで必死に暗記した記憶があります(笑)。

それから20年経った今でもテキストを読み返すと……現場を経験しているので、という事を踏まえれば内容は理解出来るのですが、覚える事が多いなぁと思います(笑)。

 

要は、例外事項が多いのですね。

 

現場では……もちろん所属する通関業者においてどのような客先、どのような取扱貨物かで必要な手続きが変わってくるのですが、私の経験の中ではこの例外規定に当てはまるような事例は殆ど遭遇した事はなく、ひたすら原則に即した実務を繰り返しています。

 

すなわち、課税物件の確定時期も適用法令の日も輸入申告の日、という事ですね。

 

現場でもとても重要です。申告日によって、納税額(税率)の増減や輸入できない等の取扱いになる可能性があります。

 

身近にある業務としては、今週と来週で為替レートが異なる場合は、どちらの週で申告しようか?と考える事があります。それに応じて納税額も変わります。

 

今は私の身近には無いのですが、特恵税率がエスケープ・クローズ方式で止まりそうな時、止まる前に早く輸入申告を入れたいと言って、特定の時期に輸入が集中した事もありました。止まってしまった日以降に輸入しても特恵税率で輸入する事ができません。そしてそれもいつ止まるか正確にはわからないので、前年の停止実績を見て輸入者は早められる輸入貨物は早めてその時期に輸入する、という事もありました。一度停止したらその年度は停止したままで、解除されるのは翌年度初め。品目によっては特恵適用可能な時間は1〜2ヶ月だけ、という事もありました。

 

ここ最近日本と諸外国とのEPAは数年ごとに締結されていますが、その施行日以降の輸入では原産地証明ができれば税率を下げる事ができます。出港日が施行日より前の場合の取扱等、税関から細かく資料が公表されていますのでこちらも要確認です。

 

特殊な貨物では緊急で発動される報復関税や相殺関税、不当廉売もそうですね。いつ発動するかいつ輸入申告するかで納税額が変わってくるので現場ではアンテナを立てておかないといけません。

 

少し税率についての話が過ぎましたが、貨物によっては輸入停止となるものもあるので、やはり現場でもこの条文は重要であるといえます(殆どが原則です)。

 

試験は例外の場合がしっかりと問われるので、抜かりなく覚えてください。

 

 

②特例輸入者/輸出者/特例申告制度等

 

これらに関する規定は条文等で幾つかあるのですが、あえてここでは一括りにしてしまいます。

税関HP

https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kaizen.htm

いわゆるAEO制度ですね。

 

通関現場にいる方でこれらを一括りに考えていらっしゃる方も多いのではと思います。そしてその方は少し年配の方だと思います(笑)。

 

私が試験勉強した時はこの制度はかけらもありませんでした。試験合格後、同業他社へ武者修行していた時に、あの0911同時多発テロが起きました。当時のお世話になっていた会社の所長さんが、朝刊を持って「えらい事になったな!」といって出社されたのを覚えています。私の中ではそれがAEO制度の始まりであったと思っています。

 

試験ではそれぞれのAEO業者(あえて纏めて表現します)の許可承認要件や失効事由、承継等問われますが、通関士として現場で従業する際に重要なのはAEO業者は申告時に何が出来るかという事でしょう。

 

基本、貨物を保税地域に搬入しないと許可にはならないのですが、特例の輸出申告の場合は搬入しなくても許可にする事ができる。

特例の輸入申告の場合は「税的検査」は省略される(検査はあります)。

認定通関業者はどこに蔵置されている貨物でも任意の税関官署に申告できる(試験には出ないかもしれませんが現場では重要です)等々…。

 

背景からも比較的新しい制度であり、民間企業間でのこのAEO制度の捉え方は様々です。

 

世界の潮流でもあり、貿易取引上、売手買手共にAEOである事が契約条件に盛り込まれてあるケースもあると聞きます。その契約条件下では、委託する物流業者もAEOが必須となるのかもしれません。

 

認定を受ける為のハードルが低く無い割には取得後のメリットがそれ程大きく無いケースもあり、各企業がこぞって取得に動き出す事になっていないのはそのような理由からだと思います。

 

通関業者も同様で、どの官署にでも申告が出来るのはメリットと言えるかもしれませんが、数年前に業法の改正で、営業区域制限の撤廃があったので認定でない通関業者も各地に蔵置されている貨物に対して申告ができます。

(両者の違いは、認定業者は任意の官署に対して申告可能だが、認定で無い業者は貨物が蔵置されている地を管轄する官署に対して申告をする。)

 

少しずつではありますが、輸出入者も通関業者も認定を受けた数が増えてきているようです。

 

以前とは環境も変わり、私も認定申請を具体的に考える事が増えてきました。

 

その時はまたここでお話ししてみたいと思います。