ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

経験値について思うこと

2022年に1月にRCEPが始まりました。

 

通関業者の方々は客先からの問合せが増えて対応に追われている事があろうかと思います。

税関も同様だと思います。

 

荷主にも直接大きな影響を与える条約が始まったり法改正があったりすると、それが始まる前後は通関関連業務に携わる方は俄かに忙しくなるのではないかと想像します。

 

 

通関士は通関のプロとは言え、日頃携わってない業務であったり経験が無いものに対しての質問や対応となるとまごつく事もあるかと思います。

今回の場合も、私の会社では社員によって経験や知識にバラツキがあるので、荷主からの質問や調査して得た情報を横展開して、社員間でのパフォーマンスにムラが出ないよう注意して進めています。

 

今回のRCEPに関して、現状特に多い質問や対応に困る点は「この原産地証明書は使えるのか?」です。

税関のHPにも記載要領があり注意深く見ながら調べます。それでも使えるかとうかの判断が微妙な時があります。そういう時は直接税関の原産地調査官に尋ねてみて裏を取ったりします。

 

自分の経験則からも、周りに話をしているのは「根拠が曖昧な時は我々で可否を判断づけて客先に伝えない事」です。

 

例えば、この原産地証明書は少し違和感があり記載要領と見比べるとミスがある。補足説明を見てもそれに関して特に記載もないので客先に「この原産地証明書は使えないですね」と答えてしまう……そのような事はせずに、使えない根拠をしっかりと税関に確認をして根拠をしっかりと押さえた上で回答するようにしています。

万が一、自分が知らない所に例外を認めるような条文がありそれを単に見逃した上で「間違った判断」を客先に伝えてしまうと、客先に多大な損害を与えてしまう事にもなりかねません。

 

そんなバカな、通関業者、通関士の方はプロなんだから何でも知っているから、そんな事はないでしょう……と思われるでしょうか……?

 

 

従業者研修や通関士試験の勉強、また通関士登録した後の通関士専門研修、関税協会等のセミナー、学ぶ場は沢山あります。

 

ただ、一旦通関の現場に入ってしまうと目の前の仕事に集中して取り組み片付けていかねばなりません。

 

通関業者は全ての業者が幅広く業務を行なっている……訳ではありません。取扱品目(HS)の幅広さ、手続関連(減免税等)の経験の有無、他法令の対応の有無……それらは全て依頼主(客先)からもたらされる訳で、ある意味その通関業者の客層の幅広さが、そのまま通関業者の経験値に繋がると自分は思っています。

 

たまに特殊な手続きや品目の依頼が来ても、そのまま数年経っても同じ内容の依頼が来なければ(記録としては取ってあるかもしれませんが)忘れてしまいます。一度きりの依頼ではイレギュラーが発生した場合の対応まで経験値として取り込む事はできません。継続的に依頼が来てこそ経験値があがる……。

 

座学をいくら積んでも、なかには体現できないものもあると思うのです。

 

通関業者や通関士は「プロとして全て知ってなければいけない」というプライドはあって良いと思いますし研鑽すべきと思います。セミナーや勉強会で知識を吸収して「未経験の業務の依頼があったら対応できるように」と準備をする事は大事です。

その勉強会が終わって机に戻るといつものルーチンが待っていて、それに没頭し、学んだ事も活かせず(依頼がないので)、いつの間にか忘れてしまう……そういう方、いらっしゃるのでは無いかと思います。私も経験してます(笑)。

 

あくまで一般論ですが、大手の通関業者はその取引がある幅広く多数の客層の業務から得られる知識や経験はかなりのもので、結果として相当の経験値を有する事になり手続関連の業務の精度に関してはまず間違いないものを持っていると思っています。ただ大手は分業制が進んでいるので「窓口担当」が全てを知っている訳ではないと思います。そのバックにある「会社」が頼りになるという事です。

 

中小、中堅の通関業者についても、社歴が長かったり特定の取扱品目についての取扱が長かったりすると通関の経験値は大手に負けないと思います。業界の中では「食品に強い通関業者」「化学品に強い通関業者」などと聞いたりします。

 

経験は客先からもたらされるという例で言うと……極端な例ですが、1つの客先の取扱品目が原料系か何かで1つの品目しかない場合。そしてそのような客先を多数抱えている通関業者をイメージします。ある意味、リスクもなく安定した仕事ができる通関業者ですがその状態で何十年も継続していると、通関の経験値という点ではなかなか伸ばしにくいのではないかと思っています。

そのような環境の中で発生した小さいトラブルや、特殊な手続依頼があったりすると、経験が無いだけに「この世の終わりだ」的な勢いで大騒ぎとなりがちです(笑)。良くも悪くも適度なトラブルやストレスは必要だと自分は感じてます。

 

 

私がこの業界に入る前に、他社の通関業者に武者修行に出た時の事です。

どこの業者にもある事ですが、そちらでは優良荷主がいらっしゃいましたが、取扱品目が限られており大手なだけに物量も多く、ひたすら同じ内容の通関の繰り返しでした。

人間、例え楽しい仕事でも同じ事を延々と繰り返しているとつまらなくなります。成長も感じられない。

 

これは良い経験でした。

 

「自分が会社に帰ったらいろんな仕事(客先)を取って行こう」と決めました。

それから現在に至るまで……。もちろん大変な事もありますが、多分ですが組織として……そして間違いなく個人としても成長しているし、経験値もかなり上げる事ができたのではないかと思っています。

 

もし自分が周りに対して出来る事であれば仕事が楽しくなれるように成長できるように環境を整えたい。個人も成長できる機会を作って、組織も強いものにしたい。

 

これは持論ですが、修羅場をくぐった回数と実力は比例すると思っています。修羅場を(人から)くぐらされてるようではただの苦行。自分でくぐるか、くぐらさらるかが、楽しいかつまらないかに繋がるのではないかとも感じています。