ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

HSコードの相違

以前から私の周りでも話題に上がっていましたが、今回は「同じ商品なのになぜHSコードが二つ以上になってしまうのか?」という事について話をしてみたいと思います。

 

下記の話はあくまで推測です。経験則からの想像の話の域を出ませんのでご了承下さい。

 

 

基本的にはある特定の商品についてHSコードを二つ以上持つ、という事はあり得ません。ある特定の商品は、HS条約で定められているHSコードの一つに必ず分類されます。

 

それなのに各輸出入者からは、「通関業者によってHSコードが異なる」という声を聞きます。

何故でしょうか?

 

考えられる原因を幾つか挙げてみます。

 

①通関業者

理由はともかく輸出入者から見ると「通関業者によってHSコード分類が異なる」と認識されているケースが多いのではないでしょうか?

ただ通関業者側も「1商品には1HSコード」という原則はわかりきっています。通関業者としては通関依頼がある都度、その商品の詳細な情報を入手するようにしています。全ての通関業者が同じようにしているはずです。

また各通関業者はその過去の商品分類の膨大な実績から、新たに依頼がきた商品を分類するにあたって実績を基に分類をする傾向もあります。

特に前者の「詳細な商品情報の入手」、これが非常に重要です。

例えば商品情報の深度を上、中、下とした場合で、下の情報しか開示できなかった場合。加えて委託した通関業者に類似の商品の輸出入実績があった場合は、その「下」の情報のみで分類をしてしまう可能性はあります。実は「中」の情報、「上」の情報、全てを開示したら全く違った分類になる……可能性もあるわけです。例えば、用途、材質(細部に渡るまでの材質)、大きさであったり……。

 

通関業者ごとに分類が異なる、という理由の一つに上記の「情報開示のレベル」と「各通関業者の実績量」が挙げられるかもしれません。

 

 

②商品

継続販売されている商品の情報について細かいところでの仕様が異なった際に、輸出入者がどれだけしっかりと把握されているか……というのもあるとも思います。

各輸出入者はメーカーだけに限りません。商品を仕入れてそのまま卸す商社もあります。

考えられる事例として、ある時期にある商品の通関を通関業者に委託をしていた。その後、商品の仕様が若干変更があり(それも輸出入者側が認識していなかった、またはしていたとしても分類に関わる重要な変更とは思っていなかった)、その同時期に「別の通関業者」に通関依頼をした……というケースです。

そうすると輸出入者側から見ると、同じ商品(名)なのに委託した通関業者によって(委託時期が異なる)、分類が異なる……現象が出てきます。

 

③法令

数十年前と違って多様な価値観や購買欲を満たす為に、企業側は必死に商品開発を進めていきます。そうするとあらゆる種類の商品が世に出回る事で、HS条約上の特定のHSコードに分類するのが難しくなってくる事があります。ですので通関現場レベルではある商品(名)でも個別に税関に照会をして分類の確認を取ったりしています。時間が経つと解釈も変わり、また商品も多様化し、また解釈も変わっていく……このような事もあります。

今もありますが、ストラップなどは良い例です。一時期、ガラケーにつけるストラップが大量に市場に出回った際、大きさ、形、仕様、様々な物が輸入されてきました。同じ「ストラップ」でも、必ずしも一つのHSに分類はされず始めのうちは都度税関に確認を取っていた記憶があります。輸出入者側から見たら同じ商品(名)なのに、何故……?という現象が出てくる可能性がありますね。

 

 

と、ここまで考えられる可能性を話をしてきました。

 

輸出入者としてはやはり原価計算をする上では、HSコードの相違(=関税率の相違)を是正する必要が出てくると思います。

 

ここで改めて、法的な背景を振り返っておきます。

今日本では申告納税方式が取られています。即ち納付すべき税額又は税額がないことが、納税義務者(輸入者)のする申告により確定すること(関税法6条の2)。

そして、現実的に殆どの輸入者がこれらの業務を通関業者に委託をしています。

一方で通関業者の業務の本質は、通関手続き等を依頼者(例えば輸入者)の代理又は代行をする事(通関業法2条)です。

実は通関業者はHSコードの分類をその会社のバックグラウンドから依頼者に提案はできますが、税関に対して決定して申告をする事はできないのです。考え方として税額(HS)を決めて申告するのは輸入者であり、その税額(HS)が異なるのではないか?こちらの税額が正しいと輸入者の同意を得て決定する権限があるのは税関なのです。

通関業者はその間で専門的な知識を持って、業務自体を迅速、適正に遂行する為に存在します。

 

話を戻しますが、そういう意味で最終的に税額(HS)を決定するのは輸入者であり税関でもあるので、通関業者の専門的なアドバイスを受けながら税関で窓口がある「事前教示制度」を活用して商品ごとにHSを確定させ、それを通関業者に展開するという方法が、通関業者ごとの解釈の相違を無くす確実な方法かと思います。

 

事前教示制度は税関のHPに記載があります。また別の機会でもここでお話ししたいと思います。