ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

関税は減らせる・・・?

こんにちは。

 

今回は「輸入関税」について、話をしてみたいと思います。

 

これは通関業者に勤務している通関士としての視点からのお話です。

 

 

簡単に輸入関税と輸入消費税について整理をしてお話しします。

輸入関税は、輸入品に課される税で目的は自国内の産業を保護するための税金です。関税をかけて輸入された商品はその分販売価格が高くなると思います。結果自国内で生産された類似/同一商品の方を低価格にする事で国内の産業を保護しようとする働きがあります。

全ての輸入品に関税がかかる訳でもありません。国内産業を保護する必要はない、または国内で産業そのものが無いので輸入に頼らざるを得ない、また輸入する国の貿易(経済支援)を促進するため日本への輸入を増やすため・・・と、国がさまざまな見地から判断をして関税(率)を決めています。ざっくりと、機械類の殆どが関税率はフリー、繊維関係、食品は有税の物が多いですね。

 

輸入消費税は、これは必ず輸入品にはかかるものです。例外はあります。特殊な輸入品であったり、減免税制度を適用する輸入品は免除になる場合があります。一般的には輸入消費税はかかるものと捉えておいても良いかと思います。税率は殆どが10%ですが、こちらも一部例外はあります。以下税関HPです。

https://www.customs.go.jp/news/news/consumptiontax2019/consumptiontax_annex03.pdf

 

 

さて、今回はその「関税(率)」についてです。

上記のように輸入消費税は通常品であれば殆どの商品が税率は固定なので、考えて何かができる余地はあまりありません。

一方、関税率は商品によって異なる税率が適用されるので、輸入品がどの商品の税率に当たるのか・・・で変化します。

この税率は税関のHPに「実行関税率表」というタイトルで載っていますが(下記)、

www.customs.go.jp

この関税率表から、輸入する商品の税率を探し当てないといけません。見て頂くとわかるのですが、分量も多く商品の定義の記載もあり読み砕くのに時間と慣れが必要です。ここの部分の判断は輸入者は通関業者に任せているのが殆どだと思います。通関業者は輸入者の代行として専門知識や経験を活かして税率を確定させ税関に輸入申告をします。そして然るべき関税額と輸入消費税額を納めて輸入許可となる訳ですね。

 

「この輸入品はどの税率が適用されるのか?」「商品の分類」という作業についてです。通関業者(通関士)は輸入者から商品の情報を元に関税率表を調べていきます。ここで正確な商品情報が無いと、その「入手した情報を元」に税率(分類)を決めてしまいます。

情報というのは、材質や用途、資料としては仕様書や営業用商品カタログですね。ただその提供される「素材」が十分で無い時がたまにあります。

 

通関実務の現場にいて、ここが難しく、また残念だなと思う時があります。

 

ひょっとしたら「この商品はこういうものではないのか?」とか「これは違うんじゃないかな?」と思う時がたまにあります。

違う角度で質問を何回か重ねても同じ内容の回答しか来ない場合はそれが正しいものとして申告をしますが、税関検査を実施して商品を確認した時、質問の回答と多少異なっていたりする事があります。

 

そういう事を考えると、もっと正確な情報を提供してくれていれば、正しい税率(分類)で申告ができ、結果として高い税率でなく本当に正しい税率(分類)(=それが低い税率)で良かったのではないか?という事があったりする訳ですね。

 

ではなぜ正確な情報が税率を決める通関業者(通関士)に伝わらないのか?という理由ですが、考えられるのはいくつかあります。

①商品に関する質問と回答が、表面的すぎる(分類に必要な事項に沿った質問や回答ではない)

②輸入者と通関業者(通関士)の間に、第三者が、何社(者)か存在しており伝言ゲームになっている

大きく分けるとこのような内容かと思います。

 

①に関しては、輸入者側では何らかの理由で詳細な商品知識を有していない場合や、質問する通関業者側も経験未熟な担当であったりすると本当に必要な質問を投げれない、というケースが含まれます。また、この状況(質問と回答の応酬)は両者とも「商品そのものを目の前に話をしていない」という事が多いと思います。頭の中で現実に近い形のイメージを作り上げて話すケースもあるかと思います。2者で話をするので同じイメージ象で話ができるか・・・ズレが出てくる可能性は否定できません。それぞれの背景から言葉(用語)の定義も異なります。

 

②に関しては、第三者というのは、仲介するフォワーダーの他に、同一社内での他部門の存在も当てはまります。間に存在する「人」が増えれば増えるほど正確な情報は伝わり難くなるのは想像に難くありません。中間に存在する第三者の通関に関する知識の向上は必要ですが限度もあろうかと思います。

 

ということでここまで話を進めてきましたが、「委託する通関業者には精度が高い情報を提供する事で誤った税額(税率)で申告する事を防ぐことができる」という事です。

それがタイトルの「関税は減らせる・・・?」に繋がるという事です。

対策として、商品のサンプルを通関業者に持ち込んで税関の事前教示に行って税率を確定させておくやり方は正しい税率を確定をする上で確実です。輸入者が直接税関に行く事も可能です。今まで実務経験の中で、新規アイテムを開発/販売する度に事前教示に確認を取るという輸入者もいました。

また輸入者も通関業者に任せきりにしないで、商品がその税率に決まった根拠も聞いておく事は必要だと思います。「税率」に興味を持つことで税のリテラシーを高め戦略的に関税を減らせる方法論を編み出せるかもしれません。

 

ちなみに、何らかの理由で本来正しいとされる税率よりも低い税率で申告した場合、不足額を納税するため修正申告を行うのですが、増差税額によっては「過少申告加算税」というペナルティを課されるので余計に支払うべき税金を増やす事にもなりますので注意が必要です。