ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

加算要素の話:運賃編

輸入申告書を作成する際にアライバルノーティス(船会社が発行する到着案内。チャージ類の請求書でもあります)を見ていつも思う事があります。

 

「すごいなぁ、また加算金額が増えたよ……」

 

申告書を作成する際に申告価格(課税価格)は特に神経を尖らせて確認をします。

 

課税価格の決定については以前お話しました。

https://tkatsuhiro.hatenablog.com/entry/2019/11/12/184430

 

インボイス価格を中心に、加算要素を全て洗い出ししないといけませんが毎回と言って良いほど加算要素が発生するのが運賃です。

 

FOBであればアライバルノーティスにOCEAN FREGHTの記載はあるので条文通り加算要素としますが、それ以外の船会社のチャージは内容を良く理解をしないといけません。

 

私は船会社やフォワーダーに勤務した事がないので、どうしてチャージの種類や金額自体が一定の頻度で発生したり上昇したりするのかは詳しくはわかりません。

推測ですが、ベースとなる(海上)運賃が他社との競争によって低く抑えられ、環境の変化で経営が圧迫されそうになった時に運賃値上げしたいのですが、荷主からは了承をもらえないから各種のチャージを設定して不足している運賃をカバーしている……のでは無いかと思っています。

 

それはさておき、各種チャージがアライバルノーティス上に記載がある時はその内容を確認して、運賃と思われる場合にはその金額を加算して申告しないといけません。

 

BAF……Bunker Adjustment Factorの略。 燃料油価格 と実際の購入価格との差を調整するための追加費用で、FAF (Fuel Adjustment Factor) ともいう場合もあります。

 

CAF……Currency Adjustment Factorの略。船社が設定した外貨換算率とフレイト徴収時の実勢為替レートとの差(為替差損益) を調整するための追加費用です。YASも類似のものです。

 

EBS……緊急燃料費割増し料。ここ数年の原油の高騰に伴い、従来のBAFとは別に、燃料費が嵩むリスクを船社が荷主に負担してもらう名目の割増し料です。コンテナ貨物にBAF(FAF)とEBSを二重に課徴する航路もあります。

 

CMF……輸入貨物の運送に使用したコンテナーの運送全般に係る管理業務の一環として、このコンテナーに原因不明の損傷が発生した際に対応する費用です。

 

CIC……日本向け輸入量が輸出量を大幅に上回る状態が続いており、輸入港に空コンテナが滞留している為に輸出貨物の方が少ないので余った空コンテナを回送する費用です。

 

最近よく目につくのは

 

LSS……条約で低硫黄成分含有の燃料使用が義務付けられており、その燃料費増加分を補うチャージです。

 

 

上にあげただけでも8種類。まだ他に似たような内容のチャージが幾つかあります。

 

通関実務上は、内容を一度覚えてしまえば特に問題はないのですが驚くのはその金額です……

もちろん船社や条件等で異なったりしますが、40Fで中国航路の輸入の場合、上記合計で15万を超える時もあります……

 

これを輸入者の視点で捉えると……

 

単純に、船会社の費用として上記の金額は支払わないといけません。交渉の余地もあるかもしれませんが、ほとんどの場合は全額を支払って貨物を引き取ります。

 

そして輸入申告の際に支払う輸入関税/消費税にどう影響するのか?

このチャージ分だけを計算してみると……

仮に商品が関税フリーの輸入の場合、上記15万に消費税10%で15,000万円の納税額上昇。

 

関税率が3%の商品の輸入の場合、関税で4,500円、消費税で15,400円、合計で19,900円、約2万円弱の納税額の上昇となります。

 

(殆どのケースで)船会社から荷主の元へ急にチャージ請求の案内が来ます。荷主は支払わないと貨物が引き取れないのでほぼ無条件に支払う事に同意しますが、上記に挙げた見えないところでも費用(税額の上昇)がかかっているのはあまり知られてないかもしれません……

 

現在、国内の配送においてドライバー不足等により運賃上昇が顕著になってきていますが、昨今は配送できないという運送業者も現れたと聞きます。

 

同業者からは国内運賃の値上げのお願いが荷主からなかなか受け入れてもらえないと聞いたこともあります。

 

ただ国内運賃の値上がり幅は、上記に挙げた諸チャージ+上昇税額よりは遥かに少ないケースが多いようです。

 

運べる車がいなくて納期に間に合わなかった、という最悪の結果にならないように荷主は運送業者と上手く付き合って欲しいと思います。