ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

課税価格の話

関税定率法第4条

原則的な課税価格の決定方法の記載があります。

 

通関士試験を勉強する上でも結構なボリュームの項目ですね。重要度も高いです。個人的には丸暗記で乗り切った記憶があります。

 

通関士試験の出題範囲も決して狭い訳でもなく覚える事が沢山あります。意味はともかくとして受かる為の勉強をしている受験生が殆どと思いますしそれで良いだろうとも思います。

 

ただもし余裕がある方がいらっしゃったらこの項目については通関実務でも非常に重要でかつ頻繁に使う法律です。しっかりと理解度を深めて勉強した方が後々活きてくると思います。

 

 

書いてある通り課税価格は納税額に密接に関係するものです。課税価格の決定を間違えてしまうと納税額にも影響が出てしまいます。本来の納税すべき額よりも少ない額になってしまえば修正申告をしなければいけません。税関としては適正な申告をするように通関業者(=荷主)に指導をしています。間違えた理由が忘れちゃったからではすみません。また、本来の納税すべき額よりも納税額が多かった場合はどうするか?更生の請求ができますが(と試験勉強でやりますが)、確かにできるのですが非常に準備と手続きに時間がかかります。日常の業務の他にこれを処理しなければならないので非常に負担になります。もちろん通関業者だけでなく税関側も同じです。修正申告や更生の請求をしなくて良いように通関業者はしっかりと荷主に確認をし荷主もこの条文をしっかりと理解する事が大切だと思います。

 

実務であるのは……

 

よくインボイスをチェックしていくと商品の価格が0になっている物があります。理由は無償だからという答えが多いようです。無償の理由は様々で、サンプルだったり前回の不良品の代替だったりしますが申告上どうすれば良いのか?と新任通関士は迷います。この条文をしっかりと勉強していればそんなに迷うことも無いですがそのような時に当てはめられます。

 

以下、税関HP

 

http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1404_jr.htm

 

そのような時は同種又は類似の貨物の取引価格による課税価格の決定方法が使われるケースが多いようですね。

原則的な課税価格の決定方法以外の方法を使う時は、私の周りではあまり機会が無いようです。この無償貨物の時くらいでしょうか?

 

次によく使われる、そして重要なのは原則的な課税価格の決定方法の中の加算要素です。

 

以下、税関のHPです。

 

http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1403_jr.htm

 

この加算要素の中の「輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他運送に関する費用」、特に運賃として加算する物の取捨選択が日常的に多いですね。船社の諸チャージが年を追うごとに増えているのが現状ですが、それらのチャージが運賃として申告価格に加算すべきかどうか、新しい項目ができるといつも迷います。税関の見解があって初めて答えが出る、ような時もあります。この運賃として加算する項目は日常的にあります。

 

次の加算要素で、「輸入貨物に係る輸入取引に関して、買手により負担される手数料や費用」、実務では「評価加算」「評価申告」と呼ばれている物ですね。このケーススタディの説明で本が一冊あるくらいです。税関からは「評価部門に確認に来てくれ」と荷主に指導があるくらい、加算すべきか非加算かの区別が非常に難しい。試験でも実務問題で出てはきますが、どんなに試験勉強しても実務ではそれを上回るケースが出てくるので経験しながら覚えていくことになりますね。とても重要な項目です。

 

 

そう言えば価格0という所で思い出しましたが、税関検査をする中でたまに輸入コンテナの中から、インボイスに記載のないモノが出てくる事があります。例えば詰め替え用の空カートンの山だったり、商品として売買できないサンプル品であったり……。輸出者としては無償だからと、という理由でバンニングの作業の終わりにそれらのモノを軽い気持ちでポンっと入れてしまうのでしょうが、輸入通関する我々側からすると大変な話なのです。上記で話をした通り、価格は0であっても課税価格の決定の原則に則って輸入申告をしないといけません。検査をするタイミングで発覚すると納期に影響を及ぼすので大急ぎで処理をしないといけません。大騒ぎとなります。また、別の視点で通関書類が全て正しいという前提で申告は進められてるので、インボイスに記載のないモノがコンテナから出てきたら密輸という扱いになる可能性もあります。輸入者の今後の輸入申告について影響があるかもしれません。当事者は軽い気持ちからの行動かもしれませんが実は後処理をする側からすると由々しき事態なのです……