ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

誤謬対策の考え方

前回に引き続きの話になります。

 

申告書類の作成で間違い(誤謬)が出た場合、何とか早期発見(社内チェック等)できれば良いですが、それで終わりではありません。対策を打っておかないと今後また同様の間違いが起きる可能性がある。その延長上には取り返しのつかない重大な事故の発生の可能性もあり得ます。

ハインリッヒの法則などと言いますが、この考え方による事故対策はあらゆる企業で取り組みされていると思います。

 

通関業務に関しても、もちろん対策を取られている業者が殆どだと思います。

言い方を変えると「事故(間違い)は必ず起きるものだ」という認識なのだと思っています。

 

事故対策の現場では「なぜ間違えたのか?」と詰める際に、精神論で語られ片づけられる事もあるかと思います。

それでは正しい事故対策は導き出せないと思っています。

 

原因ではなく真因を探せ、と言いますがこれは大変重要です。「これが原因」と特定してそれに基づいての対策を立てても、もっと深くに原因(真因)があった場合は的外れの対策となり事故再発は防げません。

 

私は事故の原因は大きく二つに集約できると思っています。

 

一つ目はシステム( = ルール)によるもの。二つ目はヒューマンエラーによるもの。

 

事故分析を進める中で「作業手順がマニュアル通りにされているか?」の視点は重要です。もしマニュアル通りに作業されているにも関わらず事故が起きるのであればマニュアル(=ルール)の見直しが必要です。誰がやっても同じ事ができるというのがマニュアルだと思いますが、複数の人が同じ手順で作業をして異なった解答(間違い)が得られるというのは、どこかに欠陥がある。細部まで手順が詰められていない。作業者の主観が入ってしまう。そこが間違い発生の基になる可能性があります。

 

私が経験した中では感覚的にはこの「作業手順に穴があった」から事故が発生したというケースはそれ程多くはありません。

 

逆に、ヒューマンエラーに起因する事故。こちらの方が多いような気がしてます。

そして殆どの企業がこの手の事故対策に悩んでいるのでは無いかと思っています。

 

人間は同じ事を繰り返していると「慣れ」が出てきます。慣れが出てくるとスピードが上がる反面「思い込み」も出てきます。

 

人間の脳は都合の良いように認識する能力も持っています。印字ミスの記載も意味が通る言葉として勝手に読み取ってしまう。

 

直近で何か気になる事や動揺する事があったりすると、目の前の書類も目で読んではいるが頭には入っていない状態になる。

 

いずれも対策が非常に取りにくいものです。

これらをひとまとめにして「集中力が足りないからだ!集中しろ」と……決めつけるのは簡単ですが打ち手として正しい指示なのか……?

 

人間の集中力は意外と短いとも言いますが、集中力の欠如が事故の原因であればどうすれば良いのか?集中力を欠いていると自分で分かった時は自分でそれに気づき適当に息抜きをするものだと思います。逆に事故が起こる時は自分が「集中力を欠いている」と認識していない時に多いのではと感じています。

 

自分の中でこの種の事故対策の方法は「脳に刺激を与える何かをする」というものです。

 

慣れからの思い込みを防ぐ。読み違いを防ぐ。頭の中が他の事でキャパオーバーの状態をリセットする。

これらは一度頭の中をクリーンにすれば解決するものもあります。

 

脳に刺激を与える方法とは、五感を使う事だと思っています。

ごくごく簡単ですが、重要な項目にはペンを持ってマークする。触覚と視覚。

作業工程を少し変える。今までが同じ事の繰り返しであれば作業工程を細かく区切って縦割りで進めるのではなく横に区切って作業を進めてみる。違う作業工程となり脳に刺激をもたらす。

指先呼称はよく現場でも用いられますが、あれは声を出す事によって聴覚にも訴える有効な方法と感じています。

社内のルールで書類作成時間の制限を決めてその時間を過ぎたら一旦休憩を入れる、というのも良いかもしれません。

 

個人単位で対策取るのも良いですが、分析をする過程で「誰でも起きる可能性がある」とわかったらルール化(マニュアル作成)する必要もあると思います。

徹底的に事故撲滅するにはルール化とその継続運用の確認。それは組織長の仕事です。

 

矛盾するかもしれませんが、上記の「脳に刺激を与えるような対策」も同じ事を繰り返せば脳もそれにまた慣れてしまうので、また事故が起きてしまう。

 

前回述べたようにこの事故対策は「永遠に終わりの無いモグラ叩き」だと思っています。

 

いくつか有効な対策を引き出しで持っておく。その引き出しを、事故が起きてから引き出しから出すのではなく、(事故が起きなくても)時間軸で出し入れを定期的に行う。これが今のところ有効な対策の考え方なのかなと自分の中で思っています。