ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

通関士試験と通関現場:その1

こんにちは。

 

昨年は世界経済も国内経済も激動の年と言えたのではないかと思います。また今年以降も先行きが全く見えません。

ミクロで見ても各企業の経営者は不安感を募らせているのではないかと思います。雇用されている従業者も同様です。

ただそういう環境でも、結局は歩みを一歩ずつ前に進めなければ人生を謳歌できないのだと個人的には思います。

逆境でも前向きに、今がドン底と思えば後は上に行くだけ……どの考え方を「選択」するか、なのだと思います。

私の身の回りもとても順調とは言えませんが、ここは無理にでも気持ちを前向きに保ち今年を乗り切ろうと思います。

ある漫画のセリフですが、

「流れは自分たちで持ってくるもんだろうがよ!」

これ、私の中では名言集の一つです。

 

 

さて年末年始ですが、さすがに外出自粛しておりまして、せっかくだから勉強しようという事で通関士試験のテキストを買い込み熟読しておりました。

なぜ通関士試験なのか?という事ですが、去年は通関士試験を目指されてる方と少なからずお話しする機会もあり、その熱意に影響を受けたのが一つ。

また昨年は通関実務をこなすケースが多く久しぶりに現場に戻った感覚の中で、20数年前に取った通関士試験の学び直しが必要だと思わせる機会がいくつかあったのが二つ目の理由です。

 

これだけゆっくりじっくり読んだのは受験勉強依頼なのではないかと思います。

受験生当時と通関業者で20年弱働いた人間がテキストを見るのとでは、(テキストの)内容も捉え方も違うことに気づきました。

 

今回のブログは、試験項目(法令)と実際の現場の比較をお話ししてみたいと思います。

あくまで、一意見として、試験対策の参考ではなく、通関士試験の後の通関の仕事はどうなんだろうか?という視点で読んで頂けたらと思います。これから何回かに分けて話を進めていきます。

 

①輸入許可前引取(BP承認):関税法73条

受験生の時は「そんな制度があるのか」くらいで、とにかく暗記、でした。

初めての通関業者の現場で、担当はしていませんでしたが「これは勉強した件だな」と思い出した記憶があります。今の職場でも忘れた頃に発生するくらいの頻度であります。各通関業者の客層によるのだと思いますが、この制度を活用している輸入者はそれ程多くないと私は思っています。

発生要件は輸入許可が遅延する時や、引取を急ぐ時。私の経験の中では後者で、原産地証明書の到着が間に合わないという客先が使用していました。

税関へのオリジナル書類(原産地証明書等)の提出の仕組みも変わり、また十数年前と比べると海外からの原本書類発送の精度(スピード)は格段に上がっているので、通関時に書類が間に合わないというケースはかなり少なくなっているものと思っています。

また、適用条件として担保を積まないといけませんが、輸入者が大手企業ならまだしも中小企業が担保を積むという事はそれだけの財政余力が無いとできません。担保は銀行の保証が多いように思いますが(低いとは言え)金利がつきますので負担があります。またそれなりに業務に詳しい人材も必要でしょう。ギリギリで経営をしている数多くの中小企業よりは、大手企業向けの制度なのかもしれません。

という事もありせっかく勉強しても、勤務先の通関業者でBP申請に出会わないケースがあるかもしれません。そうするとせっかく勉強しても忘れてしまう制度……になります(笑)。

また実務上では輸入申告(なようなもの)を2回行うので、通常の輸入申告よりは工数は多いですね。

 

②保税地域:関税法29条〜

試験勉強では5種類の保税地域を学びます。それぞれの機能、許可要件、手続き等さまざまです。

受験生の時はとにかく覚えるのに必死でしたが、もともと倉庫業に勤務していたので用語に関しては何となくのイメージがつき、ただ少し苦手な分野だったかもしれません。

通関業者で勤務するようになり、私の業務の中では保税工場、展示場、総合保税地域への手続きをした事はありません。これらは場所的にも多くはなく、また比例して活用している輸入者も数から言うとあまり多くないのかもしれません。一般品を取扱う通関業者であればこれらの保税地域に業務でお目にかかる機会は少ないかもしれません。

他所蔵置場所も特殊な状況でないと出会わない地域です。ただ、その時は急に来たりするので重要な項目だと思います。滅多にない手続きは忘れがちになります。

保税蔵置場等の機能、廃棄、見本持出、これらは通関現場では重要です。発生頻度は高いです。

改めて読み直して思うのは、これら保税地域等の許可の要件、許可の期間、収容能力の増減、休業や廃業等は、通関士試験に必要なのか?と感じてしまいます(笑)。

もちろんこれらも関税法の中に含まれているので試験範囲に入ってしまうという事なのでしょう。

経験則では、通関業者に所属する通関士が通関実務をする上で上記の項目は、必要性を感じませんでした。

 

私が保税蔵置場を会社で取得しようとした際には、この辺りをもう一度勉強して、通則等を抑えたのが出発点ではありました。その時は通関士としてではなく、会社の責任者(業務の責任者)として進めました。通関士としてではありません。立場が変われば抑えておくべき項目になるかもしれませんね。

 

今回はここまでとします。次回以降も関税法の中からピックアップして話を進めていきます。