ひろさんの貿易・通関 雑記録

貿易、物流、通関に携わる会社員の呟きです。 輸出入業者や貿易通関実務担当者へ、ビザスクやココナラでコンサルもしてます。  

食品等輸入届出の進め方:その1

今回は他法令の食品申請、いわゆる「食品等輸入届出」について話をしてみようと思います。

 

これは一般的なフローではなく、私が所属している通関業者内でのフローです。最近手がけた案件があり、またお客様からの質問や若干のトラブルもあったので、それに対しての対策や注意点も盛り込んでいこうと思います。

 

以下、進め方です。

①食品申請をしなけばいけないかどうかの判断

②分析が必要かどうかの確認(分析機関への依頼)

③申請書作成(確認届の提出)

④厚生省への申請書等の提出

ざっとこんな内容に沿って話を進めていきます。

 

①食品申請をしなけばいけないかどうかの判断

 お客様から依頼があった場合、商品名や用途を確認して食品申請が必要かどうかを判断します。

詳しくは検疫所のHPに説明はありますが、どんなものが申請が必要になるかというと一般的には食品、食器(容器、包装)、玩具等、口に含まれるものが該当します。

食品には、添加物も含まれます。食器等も直接的に人間の口に触れないものは含まれません。玩具も乳幼児が口に含む可能性があるものに限られます。

 

一回の輸入におけるアイテム数が少なければすぐに判断つきますが、多い場合にはすべてのアイテムを確認していくのでこの作業自体に時間がかかります。

この時にしっかりと商品の用途を確認しておく必要があります。全て確認を終えて食品申請が終了し次のステップの輸入申告に進んだ際、そこで新たに食品申請が必要である商品を発見した場合、通関自体が止まってしまいます。納期が守れません。

お客様の方でもすべての商品内容を把握をして食品申請の必要性を認識されていれば、この確認作業のスピードと精度は高いものになります。

しかし事前に情報の提供がなされない、食品申請の趣旨を理解していない、かつアイテム数が膨大、というケースだと上記に挙げた「通関自体が止まる」現象が発生してしまう時があります。私も新人の頃は何回も経験しました。この確認作業は大変重要です。お客様側にこの認識が乏しい場合はしっかりとリスク面を強調しながら話をして詳細な商品情報を提供してもらいます。

 

②分析が必要かどうかの確認(分析機関への依頼)

特定の商品は法令に従って分析をしないといけません。何のための分析かと言いますと人体に悪い影響を及ぼす有害な物質が含まれている可能性がある、又は流出する可能性があるものについてそれを確認するための分析です。

ある商品についてはどういう項目を試験をして一定の数値以下でなければならないと決め事がなされています。

例えば、「ナッツ類、穀物、香辛料等」であればアフラトキシン(発がん性物質)について試験をする、「穀類、豆類、野菜類」であれば残留農薬について、「加工食品」についてはサイクラミン酸等(人工甘味料:発ガン性や催奇形性)について試験をしなさい、という具合です。

こちらも検疫所や分析機関のHPに詳しく説明がありますが、そちらで確認をして分析が必要なものは分析機関に分析依頼をします。もし必要が無ければ次のステップの厚生省への申請へと進みます。

ここでよくある躓きですが、お客様の認識として「分析の必要性を知らない」「全ての商品に分析が必要」「分析が終わったら食品申請自体は必要ない」というケース。

法律の根拠、考え方、フローが理解できていないだけなので、ここは時間をかけて検疫所等のHPを見て頂き根気よく説明をしていきます。

また「前に依頼した業者の対応はこうだったが、何で今回は違うのか?」という声に対する回答もとても難しいです。経験則ではこのような声が上がるお客様は良くも悪くもこの食品申請を全て通関業者に丸投げしてしまっているケース。なので表面上のアクション(業者からの質問に対しての回答のみ)や結果(分析の合否と通関の可否)しか把握していません。こちらとしても前向きに、では「何故前回と違うのか?」の調査をしようとお客様に前回の輸入時の概要を聞いてもほとんど回答が返ってきません。これでは検証しようもない。それでも経験則でわずかな情報だけで推測をし、説明をして納得してもらいます。

話がそれましたが、分析が必要になった商品は分析機関に依頼をして分析をしてもらいます。

事前情報として、当該商品の製造者名、住所と、分析が終了した際に発行される試験証に記載する商品名をお客様に確認してもらう。現場において見本持出許可申請を経た上で分析の為の検体をサンプリングする。あとは待つだけとなります。分析項目によって結果が出てくるまでの時間に差があります。

分析の結果、最終的に異常値が出てしまった商品は原則輸入はできません。後続するいずれかのステップにおいて貨物を滅却するか場合によっては積戻しという事になります。

この合格した試験証は、それ以降の同一の商品の輸入の際に使いまわす事ができます。もちろん同じ商品である事が条件です。同一の製造所、原材料、添加物、製造工程、使われているカラー(食器等の場合)等々・・・。

分析が行われる背景の「検査」も、検疫所から指定される「自主検査」と「命令検査」がありますが、「命令検査」として行われる分析で出た試験証は使いまわしができない場合がありますので注意が必要です。

ここでよくお客様からの声で「外国で行われた試験証があるがこれは使えるのか?」「同じ商品の試験証はあるが輸入者が違うのだが」というケース。

 前者の外国発行の試験証は、日本の検疫所が認めている外国分析機関で発行されている試験証であれば使えます。もちろん日本で定められている規格に沿っての分析方法によるものである事が条件です。認められている分析機関かどうかの確認は検疫所のHPで確認ができます。

後者の輸入者が異なるケース。それ以外は全ての情報(製造所や商品内容、構成、商品名まで)が同一という条件であれば使える「場合」があります。原則一つでも情報が異なれば使えないのですが、その異なる輸入者間同士で「(試験証の)譲渡証明」や「同一証明」のような書類を作成して検疫所に提出して説明をすれば使う事ができるケースがあります。検疫所の担当者の判断による所もあるのでしょう。必ずできるとも限りません。

この試験証を発行するまでのプロセスは少なくない費用がかかります。現場でのサンプリングに関わる作業料、分析機関の分析費用等。分析の必要な商品でも毎回の輸入の都度分析をしていたら莫大な費用がかかります(前出の命令検査は除きます)。

なのでほとんどの輸入者は試験証明使いまわしを前提に輸入計画を立てているはずです。ただ残念な事に使いまわしができていないケースも見受けられます。

その殆どが初回の輸入の際に得た情報と2回目の輸入の際の情報が異なってしまっている。項目的には、製造所であったり、生産国、使われている原材料やカラー等。

理由としては、製造所の変更があったり商品仕様の変更がありますがこれに関してはある意味致し方無い理由です。もったいないなと思うのは初回の輸入の際の得た情報が正確でなかった事。やはり常に正確な情報は現地から入手しないといけませんね。

  

今回の話はここまでとします。

次回は、

 ③申請書作成(確認届の提出)

④厚生省への申請書等の提出

こちらの内容で進めようと思います。